077041 ランダム
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Lee-Byung-hun addicted

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Jealousy × Jealousy 5

Jealousy × Jealousy<5>



「オンニ・・きいてる?」
「・・・あ・・うん。聞いてるよ」
「ねえ、晋作さんとオンニ昔から仲がいいんでしょ。彼、すっごい素敵よね・・面白いし。
オンニ・・昔付き合ってたりして」
そう訊ねるウニの顔は興味津々だ。
どう答えるべきか。揺は悩んでいた。
もしここで揺がうそをついたとしても晋作はあの性格から言って包み隠さず話すに違いない。
嘘をついたことがもし後でわかったら余計話がこじれることもあるだろう。
かといってすべて真実を話していいものか。
ウニは晋作に好意を寄せているようだ。
彼の幸せを願う揺にとって相手がウニならば願ってもない良縁に思える。
ただ・・・。
彼女にこの関係を理解してもらえるのか・・。
今の揺には正直自信がなかった。

「うん。・・・・彼は私の初恋の人よ。縁がなくて結婚はしなかったけど今でもとっても信頼しているし大好きなことには変わりない。でもそれは異性としてではなくて人としてね。彼は命の恩人だし、これからも今の気持ちは変わらないと思う。ウニちゃん・・・こんな気持ちわかってくれるかな。」
「うんうん。よくわかるよ。オンニがオッパをすごく愛してるのもわかってるし。晋作さんを大切な友達だって思ってる気持ちもとってもわかる。私は男の人との間にも友情ってあると思うもん。そっかぁ・・じゃ、オンニは私がもし晋作さんと付き合いたいって言ったら賛成してくれる?」
「もちろん。大賛成。彼なら太鼓判押すわ。」
「良かった。これで味方4人確保だわ。」
「え?」
「オンマと叔父様とおば様にはもう宣言済みなんだ」
「あら、手回しばっちりね。」揺は笑った。
ウニに晋作との関係を理解できると言ってもらったのを救いのように感じる。
「なんたって最後の難関が残っているからね・・。オンニ・・オッパにそういうこと理解させるのは至難の業だと思うよ。あの人結構考え方古いし、堅いから。でも、そこをクリアしてくれないとこっちにも影響が出るから頑張ってね。」
ウニの言葉を聞きながら思う。
やっぱり彼はそのことを気にしているんだろうか・・・・・。


ウニの寝息を聞きながら薄暗いダウンライトの灯りの中で揺は一晩中考えていた。
ドアを開けて数歩歩けば彼が眠っている部屋のドアが待っている。
今夜、何故彼から逃げたんだろう。
いや、突き放したのか・・・・。
何も考えず彼の胸に抱かれたらすべては解決する気もした。
そうすることせず今ここにいるのは知らず知らずのうちに彼を傷つけていたことに対する自分へのペナルティのようなものかもしれない。
それとも私の気持ちを疑った彼への報復?
彼は私を待ってくれているだろうか。
それとも節操なく誰にでも微笑みかける私に嫌気がさしているだろうか。
それとも昔の男を人として今でも好きだと思う私の無神経さに呆れているだろうか。
彼のことを想うだけで胸が苦しい。
何度も寝返りを打ち、ため息しか出ない。
彼と付き合うことで自分と周りとの関係を考え直すことになるなんて思いも寄らなかった。
彼はそれを求めているのだろうか。
もし、生き方を変えたら私は私でいられるのだろうか。
考えれば考えるほどどうしたらいいのかわからない。
揺は結局その夜一睡も出来なかった。



ダウンライトから見放された暗い天井をじっと見つめて彼は考えていた。
俺は一体何を望んであんなことを口にしたのか…。
俺が愛している揺はいつも自然体で構えることなく誰にでもフラットに笑顔を向けられる月あかりのような女性。
そんな彼女だからずっと一緒にいたい…そう思ったのに。
今日の俺は自分が一番たくさんお菓子をもらってるくせに残ったお菓子を友達に配ろうとする母親に配るなと駄々をこねている子供みたいだ。
そんなに愛されてる実感がないのか。
自分に自信がないのか。
何が不満なのか。
ドアを出てウニの部屋をノックして彼女を連れ出して抱きしめて…。
ごめんと一言。
そうすれば昨日の二人に戻れる気もする。
それをしないのは駄々をこねた自分への罰なのか。
それともあんなに魅力的な笑顔を他の男…しかもあいつに向けた彼女への制裁なのか。
自己嫌悪と彼女への想いが募ってやりきれない…彼女は今何を考えているだろう。
わがままな俺に愛想をつかしているだろうか…それとも会いたいと思ってくれているだろうか。
この部屋がこんなに暗く寒かったことを彼はすっかり忘れていた。



すっかり寝不足の揺が次の日の朝、キッチンに下りていくとオモニと綾が楽しそうに朝食の用意を始めていた。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって。わ、お味噌汁じゃない。」
「揺・・いつもオモニに甘えてるんじゃないでしょうね。」
綾が揺を睨んで言った。
「まさか・・・」
寝不足で真っ赤な目の揺は怯えながら手を降って否定した。
「綾さん、大丈夫。揺ちゃんはとってもよく手伝ってくれてるから。心配しないで。揺ちゃん、今朝は綾さん特製の和食よ。ほら、元気出して。」
オモニはそういうとにっこり笑って揺の背中を優しく叩いた。
目から涙がこぼれそうになる。
「アジの干物焼きますね。」
揺は気づかれないようにわざと元気そうにそう言って焼き網を火にかけた。
彼女の隣では綾がきゅうりのぬかづけを切っている。
「揺・・・元気が足りない時は美味しいものを好きなように好きなだけ食べること。
相手の心が見えなくなった時は自分の大好きなものを相手に食べてもらいなさい。そうすればきっと想いは通じるから。あなたが食べて育った大好きなものを今日は私が作ったわ。今度からはあなたが作るのよ。いい。まずは腹ごしらえ。わかった?ほら。」
綾は微笑んでそういうときゅうりを一切れボロボロ涙を流している揺の口に放り込んだ。
「お母さん、しょっぱい・・」
泣きながらつぶやく揺。
「馬鹿ね。あんたが泣いてるからじゃない。」
綾は笑ってそういうと手際よく煮物を盛りつけ始めた。


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